分子標的ワクチン療法
HER2は細胞の増殖・分化に関わる受容体チロシンキナーゼであり、同じ受容体チロシンキナーゼファミリーに属するEGFR、HER3、HER4とヘテロダイマーを形成することによりシグナル伝達経路において主役を演じます。
このHER2遺伝子に増幅が起こるとシグナル伝達経路が活性化し、がんの浸潤・転移が促進され、予後が悪くなります。
食道がん、胃がん、乳がん、膀胱がん、大腸がん等多くのがん種でHER2遺伝子の増幅がみられます。
このようなHER2の機能を阻害するとがんの抑制効果が期待されることから、HER2を標的とした分子標的薬であるトラスツズマブ(ハーセプチン)やペルツズマブ(パージェタ)が用いられていますが、
複雑な投与方法、副作用、耐性、価格等の点で問題がありました。
そこで米国オハイオ州立大学のカウマヤ教授らが、HER2に対する抗体を患者様の体内で作ることを可能にするHER2ワクチン療法を開発しました。
HER2に対する抗体が患者様の体内で作られると、HER2はEGFR、HER3、HER4とヘテロダイマーをつくることが出来ず、
細胞周期や細胞分裂を促進するシグナルを送ることが出来なくなり、がんの浸潤・転移が抑制されます。
また、がん細胞の表面に発現しているHER2にくっついた抗体に免疫細胞がくっついてがん細胞を殺します。
Dose level | Peptide A + Peptide B (mg) |
---|---|
1 | 1.0 +1.0 = 2.0 |
2 | 1.5 +1.5 = 3.0 |
3 | 2.0 +2.0 = 4.0 |
4 | 2.5 +2.5 = 5.0 |
米国におけるPhaseI臨床試験を受けた49人のがん(耳下腺がん、食道がん、肺がん、腹膜がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん)患者について以下の副反応が報告された。
副反応 | 人数 | % |
---|---|---|
リンパ節の痛み | 1 | 2 |
疲れ | 4 | 8 |
発熱 | 2 | 4 |
感冒様症状 | 1 | 2 |
注射部位反応 | 12 | 24 |
アレルギー反応(軽度の低血圧、発汗) | 1 | 2 |
アラニントランスアミナーゼ上昇 | 1 | 2 |
アルカリフォスファターゼ上昇 | 1 | 2 |
リンパ球減少症 | 2 | 4 |
白血球減少症 | 1 | 2 |
低アルブミン血症 | 2 | 4 |
低ナトリウム血症 | 2 | 4 |
低リン血症 | 1 | 2 |
注射部位の痛み | 1 | 2 |
筋肉痛 | 2 | 4 |
皮膚乾燥 | 1 | 2 |
皮膚の痛み | 1 | 2 |
かゆみ | 1 | 2 |
斑状丘疹状皮疹 | 1 | 2 |
皮膚および皮下組織障害 | 3 | 6 |
皮膚潰瘍 | 1 | 2 |
血種 | 1 | 2 |
治療法の基本は、食道がん、胃がん、乳がん、胆道がん、膀胱がん、大腸がんの患者様に対する、
HER2のトラスツズマブ結合部位ペプチドとペルツズマブ結合部位ペプチドのワクチンの筋肉注射です。
分子標的ワクチン療法は、ご自身の免疫の抗体を使ってがんを退治する治療方法です。
治療は通院で行います。
事前検査でHer2陽性である必要はありません。
このワクチン注射を初日、3週間後、6週間後の3回による通院なので、患者様への精神的、肉体的負担も少なく、副作用も少ない治療になります。
現在、標準治療を受けている患者様でも、受けることが可能な治療方法になります。
※ワクチン注射前および最終のワクチン注射3週間後における血中HER2濃度および腫瘍マーカーを定量することにより効果測定を行います。
分子標的ワクチン3回投与 | 180万円(税別) ※別途採血料などがかかります。 |
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